イントゥ・ザ・ワイルド(2009/03/09 追記)
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- 発売日: 2009/02/27
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監督・脚本のショーン・ペンも素晴らしいが、それ以上に主演のエミール・ハーシュが素晴らしい。
裕福な家庭に育った青年が、家族にも世間にも背を向けて、本当に「持たざる生活」をするためにアラスカを目指す。
主人公クリスの心はあまりに繊細で、あまりに脆い。大人になりきれていない危うさと、大人になることに対して身構えている緊張感。若者らしい瑞々しくて壊れやすい心。心と体の不均衡。
あまりにも切なく、幼い情熱で、ひたすらにアラスカを目指す。
クリスの旅は「自分探しの旅」ではない。
自分を探すことなんてできない。「自分に探される自分」なんてどこにもない。
彼は家族にも世間にも背を向けたけれど、「自分」として旅をした。
ぼくらは、孤独を怖れ、失うことを怖れている。それらの怖れが悩みや痛みを引き起こす。
ボクは、その悩みや痛みに振りまわされるのが、人間らしさだと思う。
振りまわされて打ちのめされても、最後の最後で立ち上がれたらそれで充分なんじゃないかと、立ち上がれなくても顔を上げて目を開くことさえできればそれで充分なんじゃないかと思う。
でも、クリスは「持たざること」に対する恐怖に敢然と立ち向かう。そんな彼の姿が心を打つ。
彼の気持ちを理解することはできるが、ボクは彼とは違う方法で旅を続けていく。
他人の人生を追体験できるというのが映画の良さだとしても、この映画はあまりにも悲しすぎる。
松尾芭蕉を思い出した。