対決−巨匠たちの日本美術

上野の東京国立博物館にて開催中の「対決−巨匠たちの日本美術」展へ行ってきた。
国立博物館は、いつもながら楽しいことを考える。「対決」という軸の賛否は別として、良いものを多くの人に見てもらおうというキュレーターの意図は、たくさんの人に受け止められたみたい。……すげぇ混んでた。
取り組み?は以下のとおり。
運慶 vs 快慶
雪舟 vs 雪村
永徳 vs 等伯
光悦 vs 長次郎
光琳 vs 宗達
仁清 vs 乾山
円空 vs 木喰
大雅 vs 蕪村
若冲 vs 蕭白
応挙 vs 芦雪
歌麿 vs 写楽
鉄斎 vs 大観
スゴイね。
展示してあるもには、国立博物館の収蔵品も多く、見たことがあるものあった。でも、国宝、重文を惜しげもなく「対決」させられるとさすがに見ているこっちも気合が入る。いろいろなことに気がついたし、改めて作品をみて思い直すこともあった。
特にボクが気に入ったのは以下の作品。
雪舟の「慧可断臂図」(国宝)初めて見た。達磨さんに弟子入りしようとする偉いお坊さんが、自ら切り落とした左手を捧げている。異様な迫力に気おされてしまった。
雪村の「呂洞賓図」(重文)ユーモラス中でありながら緊張感のある、不思議な絵だった。
等伯の「松林図屏風」(国宝)何回見てもスゴイ。幽玄の世界に吸い込まれそうになる錯覚を起こしそう。霧の立ち込める松林の「静けさ」という音楽が聞こえてくる感じ。同時に温度や湿度まで。「萩芒図屏風」も良かった。見ているだけで秋の風と匂いを感じる。
永徳の「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」は最近永徳のものだと鑑定されたらしい。(asahi.com : 朝日新聞社 - 特別展「対決−巨匠たちの日本美術」 − トピックス)圧倒的な画力。水の表現は特にスゴイ。
「光悦 vs 長次郎」で展覧されていた茶碗たちは、どれも素晴らしかった。完成された未完成というのか、広がり続ける宇宙を感じつつも手の中に納まりそうな愛おしい形と大きさ。ものすごく触りたくなった。光悦の硯箱も実物はスゴイ。工芸品の域を超えている。完成度が全然違うと思った。
光琳の「白楽天図屏風」は見ているだけで体が揺れだしてしまいそうになる作品。波にもまれる小さな舟がダイナミックに描かれている。
乾山の「色絵紅葉図透彫反鉢」は、ただただ「キレイ」としか言えない。目線を展示されている鉢に合わせて低くしてみると、まさに自分が紅葉真っ盛りの山にいるような気分にさせてくれる。
円空 vs 木喰」の見どころは二人の自刻像だと思う。表現方法は違っていても、どちらの自刻像も、とても良い顔で微笑んでいて、見ているものの心を安らかにしてくれる。両方ともみんなに撫でられて頭がピカピカしていた。(今回は残念ながら撫でられなかったけど!)人を感じる幸せにホッコリ。思わず合掌。
若冲蕭白は、やはり少し違う。日本の巨匠がコレだけ並んでいても、若冲蕭白は飛び抜け方が違うと思った。
芦雪の「虎図襖」(重文)は日本一大きな虎の絵だという。猛虎であるのにユーモラスな表情、ディフォルメされた肢体が軽妙な味を添える。絶妙のバランス。
写楽の作品は何か不思議な感じ。写楽は二人いたとか四人いたとかいう説を唱えている人がいるようだけれど、今回の展示を見たら、たしかにそうかも知れないと思った。(工房みたいなもんだから、複数人いても確かに不思議ではないよなぁ)
常設展も行くつもりだったのだけど、「対決−巨匠たちの日本美術」のあまりのボリュームに消化不良を起こしそうだったので、今日は平成館だけを見て帰ってきてしまった。
図録も中々出来が良さそうなので、読むのが楽しみ。
今日も良い物をたくさん見られて大満足だった!


東京国立博物館