信州人


信州人としては、実家に帰ったら、まず信州蕎麦。
親の顔を拝むよりも先に信州蕎麦。

食文化という言葉もあるくらいだから、やはり「食」と「文化」は切り離し難い。

「蕎麦粉」と「水」、「出汁」の三つだけで勝負する料理が発達したのは、基本的に貧しい土地であった信州の人間が「基本的に」美味しくない食べ物である蕎麦を、どう美味しく食べるかを探求していった結果だと思う。
どれかひとつが欠けても、三つしかない故に致命傷となり、三つしかない故にその奥も深い。

そういった意味でも、信州の人間にとっての信州蕎麦は、土地に根ざした文化であるわけだから、手っ取り早く帰郷の感慨を煽るのには、最も都合の良い食べ物であるとも言える。

まぁ、単純に言うと実家に帰ってきて美味しい蕎麦を食べると、
「あぁ、帰ってきたなぁ」
と、思うというそれだけのこと。

もちろん、良識を備えた社会人として、親の顔を拝むよりも先に蕎麦屋へ直行なんてコトは、三回に二回くらいしかない。